神経線維腫症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)について
1. 神経線維腫症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)とは
神経線維腫症は、皮膚、神経を中心に人体の多くの器官に神経線維腫をはじめとするさまざまの異常を生じる遺伝性の病気です。神経線維腫症のことをレックリングハウゼン病とよぶこともありますが、これは、19世紀に神経線維腫症の神経症状について報告したドイツの学者、レックリングハウゼンに由来した病名です。神経線維腫症には大きく分けて1と2の二つのタイプがあります。神経線維腫症Ⅰ型と神経線維腫症Ⅱ型と呼ばれる二つのタイプです。神経線維腫症Ⅰ型は神経線維腫と呼ばれる腫瘍(できもの)や色素斑(しみ)など皮膚症状が強く、神経線維腫症Ⅱ型は両側の聴神経(音を感じる耳の中の器官を支配する神経です)の腫瘍を主体に皮膚病変の少ないタイプです。神経線維腫症の中では神経線維腫症Ⅰ型が多いので、単に神経線維腫症というときはだいたい神経線維腫症Ⅰ型を指しています。
2. この病気の原因はわかっているのですか
17番染色体の上に存在するニュウロフィブロミンと呼ばれる蛋白質をつくる遺伝子に変異があることが分かっています。この蛋白質は、我々ヒトを構成する細胞の増殖シグナルを消すはたらきがあるとされ、この蛋白質が変化した結果、細胞の増殖シグナルが消されなくなり、神経線維腫症Ⅰ型に伴う色々な症状がおこるとされています。
3. この病気ではどのような症状がおきますか
神経線維腫症Ⅰ型の主な症状は皮膚にできる色素斑(しみ)、皮膚の神経線維腫、目、骨の病変などですが、稀なものまで含めるとかなりたくさんあります。神経線維腫は、皮膚や、皮膚より下の組織にできる良性腫瘍で、神経性の細胞や線維性の組織、非常に細い血管などからできています。生まれたときにはなく、思春期頃から少しずつできてくるのが普通です。しかし、できはじめる時期にはかなりの個人差があり、30歳を過ぎてからできたという患者さんもめずらしくはありません。同様に、神経線維腫の数にもかなりの個人差があります。数えきれないほどたくさんできる患者さんもいれば、数個しかできない患者さんもいるのです。色素斑(しみ)はミルクコーヒーの色に似た褐色調で、カフェオレ斑と呼ばれています。生まれた時からあるのが普通で、すべての患者さんに生じる症状ですが、神経線維腫症ではない人にも数個であればみられることがあります。このため、神経線維腫がなくカフェオレ斑だけで診断しなくてはならない子供の患者さんなどでは、カフェオレ斑が何個あるかが問題になります。実際には、大人の場合で1.5cm以上のものが、子供の場合で0.5cm以上のものが6個以上あれば神経線維腫症Ⅰ型の可能性が高いと言われています。
4. この病気はどういう経過をたどるのですか
ほとんどの神経線維腫症Ⅰ型の患者さんにカフェオレ斑と神経線維腫が出現します。カフェオレ斑の多くは生まれた時からありますが、神経線維腫は、生まれたときにはなく、思春期頃から少しずつできてくるのが普通です。その他眼、骨などの症状は様々の頻度で、様々の年齢に出現しますので、必ずしも全部の患者さんにみられるとは限らない神経線維腫症Ⅰ型の特有の症状がいくつもあります。患者さんの年齢によって気を付けなければならない症状が異なりますので、医師の定期的診察を心がけて下さい。ごく稀に神経線維腫が悪性化した場合などを除いて、神経線維腫症Ⅰ型自体で死亡することはほとんどありません。神経線維腫が多発して美容的に気になったり、子供に2分の1の確率で遺伝する病気ですので結婚して子作りの時に悩む患者さんがいますが、立派に社会人として生活なさっている方がほとんどです。
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- 社会保険労務士 堀勇
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