ADH分泌異常症について
1. ADH分泌異常症とは
ADH(抗利尿ホルモン)は、腎臓で作られる尿の量が多くなり過ぎて体内の水分が不足することのないように、ちょうど水道の蛇口をしめるような作用を持つ生命にとって最も重要なホルモンの一つです。このホルモンの分泌量が適量であれば体の水のたまり具合が正常に保たれますが、もし不足すれば中枢性尿崩症という一日の尿量が10リットルにもなるような病気を、また多すぎればSIADH(ADHの分泌過剰症)という水が貯まりすぎて体液が薄くなる病気がそれぞれ発生します。ADHは脳の中の視床下部という場所で合成され、下垂体の後葉から血中に分泌されるホルモンで、腎臓の尿細管という場所で水を取り込む作用を発揮します。
2. この病気の原因はわかっているのですか
中枢性尿崩症はその原因により、1)脳腫瘍、外傷などの視床下部や下垂体を傷害する原因(腫瘍など)がもとになり二次的に発生する続発性中枢性尿崩症(約60%と最も多い)、2)種々の検査で脳腫瘍など原因となるものが見あたらない特発性中枢性尿崩症(約40%)、3)遺伝性に発症する家族性中枢性尿崩症(約1%)の3群に分かれます。
3. この病気ではどのような症状がおきますか
中枢性尿崩症では多尿、口渇、多飲が主な症状で、その他に、皮膚や口の中の乾燥(ねばねば感)、微熱(汗が出にくいため)、食欲不振などがよく起こります。典型的な場合には、1日の尿量は10~15リットルにもなります。多尿や口渇は糖尿病の症状としても出てくることがあるため、 糖尿病を心配されて病院を受診される場合もありますが、尿の中の糖や浸透圧(尿の濃さ)を検査することで簡単に区別できます。中枢性尿崩症では睡眠中も排尿が1~2時間毎にあり、そのたびに水を飲むため睡眠障害も起こします。この病気では脱水傾向になりやすく、夏季でも汗が出ないとか舌がからからになるこ とがあります。小児では夜尿症として見つかることもあります。続発性中枢性尿崩症では脳腫瘍などの原因となる疾患があるため、腫瘍の症状(頭痛、ものが見にくくなるなど)が同時に出てくることがあります。
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